あくまでも個人的な見解としてのおそらく、だけど、

たとえば握りの特上を1人前注文したとして、

ウニ、いくら、トロ、赤身…というラインアップかと思いきや、

その隣の2貫くらい、ネタがのっかってないただの酢飯の小さい塊だったら、

出てきた時に衝撃を受けないだろうか?

高校生の夏の甲子園大会で、

グランドに整列して校歌を歌っている勝利チームの中で

18人中3人ほど下半身だけパンツ一丁だったとしたら

それを見て一瞬凍りついてしまわないだろか。

脇を猛スピードで通り過ぎたバスが

4輪あるはずのタイヤの後ろだけ、片方完全に取れた状態だったら

「ええ〜っ」と目が点にはならないだろうか。

それと似ていると「個人的には」感じた事件に遭遇した。

本日正午近くのことである。

外は霧雨ぱらつく肌寒い曇天模様だったが、

書道教室は普段と変わらない、

どちらかと言えば温かめの、のんびりした空気が占めていた。

今日も皆さんたいへん素晴らしい作品を書かれ、

うちの教室のレベルの高さを誇らしげに思っていた頃である。

お稽古ももう終わりに近く、

来月の忘年会の話に花が咲いているところだった。

お稽古では、書いたものを数点、ホワイトボードに貼ってもらって

ああでもないこうでもないと俺が細かく(口煩く?)講評をすることにしている。

と、

みんなの歓談を縫うように、

褚遂良の雁塔聖教序を練習されているAさんがご自分の作品を

ホワイトボードにマグネットでプチッと留めた。

音に気づいて体の方向を数十度回転させ、

視線を半紙に書かれた文字群に向けた時である。

そう、そのときに衝撃が走った。

「ない」のである。

あるべきことに疑いを持つことすらしないほど、

そこにあるのが当然のものがないのである。

書かれた文字は6文字。

右に縦3文字、左に縦に3文字である。

右側の3文字の最後は「滅」という字だった。

そのハズのはずだった。

しかしその彼女の「滅」の字、

偏の部分と「垂れ」から「一、火」の部分までは存在するのだが、

その後にあってしかるべきビヨーンとした長い斜め線と、ぺろっとした「ノ」と、チョンの3画がないのだ。

もちろんそのあとに書かれただろう左の列の3文字は何ら問題なく鎮座している。

まったく途中である3文字目だけ、その一部がディスアピアーしているのだ。

怖いじゃないか!!

頭の先からだったか、足の先からだったかかは忘れてしまったが、

とにかく全身に鳥肌がダーッと広がる思いがした。

「な、な、なんかおかしくないですか?」

と促してみたが、ご本人はちっとも意に介す様子はなく、

どちらかと(ココロを鬼にしてあえて)言うと、

しれーっとした面持ちにさえ見えた。

上品に、「何か?」って感じで。

いやいやいやいや、おかしいでしょ〜。

明らかに、おかしいでしょ〜。

ネタ乗ってませんよ、その寿司。

ユニフォームのズボン履いてないじゃないですか!!

タイヤ取れてますって!!

5呼吸くらい置いて

漸くことの恐ろしさに気づき、

あああ、と声を上げられたが、

上品でスマートであればあるほど、

恐ろしさも比例して上昇するのであった。

こうやって文章にしていて、

「この恐怖、わかりづらいかなあ」と心配ではあるのだが、

どこからかの依頼で金が出ているわけでもないもんで、

このまま手を加えることを放棄し、

一人くらい「わかる〜」という読解力と感性のレベルの高い人がいることを願いつつ。

でも、結局教室内にどかんと爆笑が起こり、

素敵な時間にはなったんだけどね。

楽しい書道教室へ、

みんな来てね!

なんつって。

RENCLUB/Ren Yano

REN Yano -Japanese Calligrapher gained Australian PR as an artist. In 2010 his work 'place of origin' became a national property of JPN. Also he was conferred Consul-General's Commendation on in 2016.

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