シドニーって冷房の効き方が半端ないことはご存知だと思うけど、今日はバスの中、冷房…じゃなくて冷凍庫みたくなってて、めっちゃ寒かった。後ろの方、たぶん何人かは凍ってたと思う(確認してないけど)。つららも下がってた気がする(確認してないけど)。
こんなときにパシフィックハイウェイが混んでてちっとも進まず、その分オレらの身体は段々と凍らせられていく。足の方から徐々に冷え固まっていきそうだ。
おかしい…。ここまで寒いと最早尋常ではない。まさかこれは誰かの陰謀…。だとすれば考えられるのは…。俺は車内をぐるりと見渡したが、宇宙的に重要そうな人物はいなさそうだ。とすれば、ねらいは俺しかいない。定期のバスを装って他の乗客まで巻き込むなんて…。
考えられる組織が浮かぶ。しかしここは日本ではない。それ以外の組織の可能性がないとも言い切れない。
バレたのか…。
いや、そんなことはないはずだ。
いったいどの組織が、なんの目的で…と、敵の真意をつかみあぐねてたときに、バスがいきなり左に曲がった。通常のコースを外れたのだ。無理矢理曲がったのだろう、車体が大きく揺れる。そして間を置かず次は右へ車体を振りながら方向転換し、乗客の戸惑いなどものともせず、ぐんぐんスピードを上げる。
冷凍されかけて(あるいは後部座席の者は凍ってしまっていて)思考能力が低下していたため、誰も巨体の運転手(いや、敵の組織の一員)に文句を言うものはいない。とにかく寒くて仕方がないのだ。
俺は変身しかないと思った。
フォーゼとのTV番組争いに破れた俺は、その復讐を恐れたフォーゼ、メテオ一団に刺客を放たれ、執拗な追撃を寸でのところで幾度もかわし、赤道を遥かに超えてここシドニーまで逃げてきた。そして仮面ライダー・ショカー(中国語では仮面騎士書家)であることを隠して影の生活を送ってきたのだ。
お気づきと思うが、仮面ライダーなのに、悪の組織ショッカーと名前が微妙にしか違わず、お父さん世代に紛らわしい、というのがフォーゼとの主役争いに敗れたそもそもの理由である。
車内にはさらに冷気が舞う。
急がなければ。折角極秘にしてきたが、殺されるとあっては何もしないではいられない。そして俺のことより他の乗客をの命を守らなければならない。
変身するには「書道フォン」で漢字を書きながら(シンケンジャーと同じ)、ベルトを巻き、腕を上げ下げする一定の動作を行い、「とぉーっ」とジャンプしなければいけない。そう、「とぉーっ」だ。えっ、「とぉーっ」?? 問題発覚。
がああああああっ、バスの中では「とぉーっ」できないじゃないか!
このままどこかへ連れ去られてしまうのか?乗客の安否は俺にかかっているのに!!
どうする、俺? どうするんだ、仮面ライダー・ショカー!!!
と、バスはチャツウッドの駅前に到着した。
あそこで脇道に入ったのは運転手の英断だろう。通過するはずだったバス停で待っていた人には申し訳ない気がするが、あの渋滞ではいつ目的地に着くかわからない。そのあと折り返しのタイムテーブルも台無しにするわけにはいかないし…。
外に出たらあったかかった。
ああ、寒いのは嫌だ嫌だ。
今日もがんばろう。
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